2010年04月22日

<裁判員裁判>母親に有罪判決 回復の見込みない息子刺殺(毎日新聞)

 自殺を図り、回復の見込みがなくなった長男(当時40歳)を刺殺したとして、殺人罪に問われた千葉県我孫子市の無職、和田京子被告(67)の裁判員裁判で、東京地裁は22日、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役5年)の判決を言い渡した。山口裕之裁判長は「決して許されたわけではなく、重い有罪判決を受けたことを孫に伝えてください。誤った考えを持たせたくないというのが裁判員の思いです」と和田被告に説諭した。

 東京地裁528号法廷。和田被告は小さく頭を下げ、静かに涙を流しながら判決を聞いた。「行為の凄惨(せいさん)さと結果の重大さは言うまでもない」。被告の行為を非難する言葉もあった。手段を尽くす余地があったはずなのに、自殺未遂から10日で事件を起こしたことから「短絡的犯行」とも指摘した。

 一方で、被告は息子が自殺を図るという衝撃的な事実に直面していた。高額な医療費がかかるのに、健康保険が適用されないと聞かされ、追い打ちをかけられた。「子供たちを食べさせていけない。いいパパが悪いパパになる」。長男の妻が泣き崩れたことを知った被告は「妻や孫を苦しませたくない」と考えた。

 「母さん、やってくれ」。被告は意識を失った息子がそう言っているように思ったという。「冷静な判断力を欠いたまま、衝動的に息子の命を絶つしかないと考えた」「異常ともいえる心理状態で犯行に至った被告には同情の余地が多々ある」。判決は、法定刑の下限の懲役5年から刑を減軽し、執行猶予を選択した。

 ◇判決の認定内容

 09年7月25日午後5時過ぎ、東京都文京区の日本医大付属病院高度救命救急センター病室内で、長男正人さんの左胸を包丁で4回突き刺して死亡させた。

 ◇裁判員、初公判から4日間考え続け…

 「自分が同じ立場だったら、どうしただろうか」。判決言い渡し後に会見に応じた4人の裁判員と2人の補充裁判員は、初公判から4日間考え続けたという。女性裁判員は「自分にも母と子がいる。いろんな思いがよぎったが、答えは出なかった」と語った。

 事件は、どこの家庭で起こっても不思議ではない家族間の悲劇だった。別の女性裁判員(55)は「一番傷つきやすい孫のことを考えた」と明かした。「人を殺すことで事態の打開を図ることを是認するものではない」。説諭の言葉には、裁判員全員が被告や孫に伝えたかった思いが込められているという。

 「4日間、家に帰っても頭の中に裁判のことがあった」。男性裁判員(34)は「なんとかこらえて冷静に判断した」と振り返った。

 ◇社会に出されたメッセージ

 何という悲劇の連鎖か。法廷で明らかになった事実に、やるせなさを感じた。長男の自殺未遂、高額な医療費、親族間殺人……。事件までの10日間を、長男の妻は「出口のないトンネルのようでした」と証言した。

 和田被告は3人の子供を育てた。80年代には夫の仕事のため、家族で米国に暮らし、言葉の壁に戸惑う我が子を励ました。次男(38)は「器が大きく、逆境に動じない。人生の迷路に入ると母に相談した」と嘆願書に書いた。長女(36)も「責任感のある母が、残された家族の今後を思って1人捨て石になった」とかばった。

 主任弁護人は「この事件に悪者はいない」と言う。医師も勤務先も家族も、それぞれの立場で責任を果たそうと努力したのだろう。だが、そこに解決策は見えなかった。悪者でなく、むしろ善良な市民が裁かれる現実を不条理と感じた。「早くバアバのチャーハンが食べたい」。孫が自分の母に語った言葉に救われるとともに、けなげさに胸が痛んだ。

 被告はどうすればよかったのか、法廷に答えはなかった。だが、どんなに行き詰まった状態でも、人を殺すことは許されない。それを孫や世間に伝えようと、裁判員たちは説諭に思いを込めた。自分の身に置き換え、心を揺り動かされながらも、社会にメッセージを発信して責任を果たす。裁判員たちが苦悩しながら導き出した「正義」に、目を見開かされた。【長野宏美】

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posted by ミドリカワ トシオ at 23:42| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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